プログラミングは発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ人にとって、相性の良い分野といわれています。
しかし、ASDの人がプログラミングに向いているといわれる根拠までは知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、ASDの特性がプログラミングに活かせる理由を詳しく解説。
プログラミング学習の取り組み方についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
ASDの人にプログラミングはなぜ向いてる?
ASD(自閉スペクトラム症)の人がプログラミングに向いているとされる理由は、ASDの特性がプログラミング作業において有利に働くからです。
例えば、ASDの人は「急な予定変更が苦手」「いつもと違う道を通るのが苦手」といったように、常に一定であることを望む傾向があるといわれます。
この特性は見方を変えれば「規則性やルールがあるものをその通りにやり遂げるのが得意」とも考えられますよね。
そしてプログラミング言語はまさにルールのかたまり。
ASDのこだわりの強さは、コードの構造を理解し、複雑なアルゴリズムを追跡するうえで大きな強みとなります。
大手IT企業が集まるシリコンバレーにASDまたはその傾向を持つ人材が多くいるとされていることからも、その相性の良さがよくわかりますね。
プログラミングと相性の良いASDの特性
プログラミングと相性の良いASDの特性について、もう少し詳しく見ていきましょう。
特性には個人差があるため全員に当てはまるわけではありませんが、傾向としてチェックしてみてくださいね。
規則性を好む
ASDの人は、規則を守ることに強いこだわりを持つことが多い傾向にあります。
そしてプログラミングは、規則性に基づいて論理的なコードを書くことが重要です。
つまりASDの特性とプログラミングに求められる技能が見事にマッチしているんですね。
加えて、プログラミングには例外や曖昧さがほとんどないので、臨機応変な対応やあいまいな指示の理解が苦手な人にも取り組みやすい作業といえます。
集中力が高い
ASDには、関心のある分野に対して高い集中力を発揮できるという特性があります。
これはプログラミングにとても相性の良い特性です。
プログラミング作業は複雑な問題解決を含むため、長時間の集中や細かい注意を要します。
ASDの人の集中力の高さは、コードの品質向上や効率的なデバッグ(バグを見つけて手直しすること)において非常に有利です。
論理的思考が得意
ASDの人は論理的かつ規則性に沿ったルールの中で物事を考えることを得意とする傾向がありますが、これはプログラミングに必要不可欠なスキルです。
特にデバッグやアルゴリズムの設計において、この論理的思考力が重要な役割を果たします。
細部への注意力が高い
ASDの人は、細かいディテールに注意を払うことが得意な人が多い傾向にあります。
プログラミングでは小さなエラーが大きな問題を引き起こすこともあるため、この特性はプログラム開発に大いに役立ちます。
ASDの人がプログラマーとして働く場合に直面しうる問題とは
ASDとプログラミングの相性が良くても、プログラマーとして働く場合は仕事内容や職場環境により問題が生じる可能性があります。
あらかじめ環境を整えたり周りに協力を仰いだりできるよう、どのようなことに困難を感じる可能性があるか一緒に考えてみましょう。
コミュニケーションの難しさ
プログラミングは、他の仕事に比べて対人関係のストレスが少ないと言われています。
これは個人で完結する作業が多く、コミュニケーションスキルが求められる場面が少ないためです。
しかし、コミュニケーションを必要とする場面が全くないわけではありません。
会社でプログラマーとして働く場合、プロジェクトはチームで進めることが多くなります。
また、日本のプログラマーは客先に常駐して働くことが多く、そうなると顧客との関わりも不可欠です。
よって対人関係や社会的なやりとりが苦手な場合、職場でのサポート体制や適切なコミュニケーション方法の確立が重要になります。
ただ、在宅勤務可能な企業もありますし、フリーランスのプログラマーとして在宅案件を獲得する道も選べます。
働き方が選べるという点では、他の職業に比べて働きやすいといえるでしょう。
柔軟性の要求
プログラマーとして働いていると、新しい技術の導入や急な要件変更など、柔軟性が求められる場面もあります。
そういった場面では、こだわりの強さが原因で困難を感じることもあるでしょう。
そのため、柔軟性を求められるような場面では「具体的かつ視覚的な資料で説明する」「変更を段階的に導入する」「変更をルーチンに組み込む」といった職場側のサポートも重要になります。
職場の理解を得るためにも、どういった場面で困難を感じるか、またどんな配慮があると助かるか伝えておくことが大切です。
感覚の過敏さ
感覚の過敏さは、ASDの人々が職場で直面する可能性のある課題のひとつです。
職場環境が騒がしかったり、強い照明があったりする場合、感覚過敏のある人は不快感を感じ、集中するのが難しくなることがあります。
プログラミングに長時間の集中およびディテールへの注意が必要であることを考えると、感覚の過敏さを持つ人には、静かで適切な照明が確保された環境が必要です。
職場の協力はもちろんですが、自分でもヘッドホンの使用やデスクまわりの配置などで工夫できないか考えてみましょう。
ASDの人のための就労支援とは
就職したものの思ったような収入が得られないということは少なくありません。
その点、就労支援を利用してプログラミングスキルを身につけてから就職すると、収入アップに繋がったり昇給できたりといった可能性も。
ASDをもつプログラミング初心者がプログラマーとして活躍するためには、以下のようなサービスを利用するのが有効です。
- 就労移行支援
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障害者のための就労サービスで、ITやプログラミングに関する知識・スキルを学ぶことができます。また、就職活動のサポートもおこないます。
- プログラミングスクール
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短期間で実践的なプログラミングスキルが学べるうえ、転職支援があるスクールも少なくありません。教育訓練給付制度が利用できるスクールもあります。
- 障害者雇用を支援する企業
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IT企業には発達障害者の雇用を積極的に支援している企業も。そのような企業では、未経験でもプログラミングを学びながら働ける場合があります。
就労移行支援は福祉サービスなので利用料金が厚生労働省により定められており、9割を市区町村が、1割を利用者が支払う仕組みです。
ただ、費用負担が発生するのは住民税課税世帯のみなので、約9割の人は無料で利用しています。
地域によって利用料を全額自治体が負担してくれることもありますよ。
ITスキルを身につけられる主な就業移行支援サービスには【LITALICOワークス】 や【atGPジョブトレ】などがあります。
もちろんハローワークや障害者就業・生活支援センターなども、障害者の就労において重要な役割を果たしています。
ただプログラミングの学習および就労は専門的な知識やスキルが必要になるので、さまざまなサービスを組み合わせて利用すると良いでしょう。
発達障害の子がプログラミングを習う際のポイント
ASDなどの発達障害を持つ子どもにプログラミングを学ばせてみたい。
そんなときは、スクール選びが重要になります。
例えば先ほど紹介した就労移行支援【LITALICOワークス】を運営する株式会社LITALICOは、プログラミングスクール【LITALICOワンダー】の運営もおこなっています。
【LITALICOワンダー】は、発達障害(またはグレーゾーン)の子が全体の約3割ということもあり、必要な支援・環境を相談のうえでプログラムを組んでもらえるのが特徴。
発達障害に理解のあるスクールを選ぶことで、ひとりひとりの個性が認められ、自信に繋がる学習が可能になります。
もちろん、みんながみんなプログラミングに興味を持つというわけではありませんが、何か習い事を始めてみたいと考えているなら、候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
まとめ:スキルを身につけ環境を整えて特性をプラスに
ASDをもつ人がプログラマーに向いているとされる理由は、その特性がプログラミングの要求と合致するためです。
プログラミングの要求と合致する特性には、こだわりの強さ・集中力・細部への注意力などが挙げられます。
スキルを身につければ仕事の幅が広がり、働き方が選べる可能性もぐんとアップしますよ。
プログラミングに興味がある人は、就労移行支援やスクールなども上手に利用しつつ、ぜひチャレンジしてみてくださいね。