小学校でのプログラミング必修化にともない、よく聞かれるようになった「アンプラグドプログラミング」という言葉。
「コンピュータサイエンスアンプラグド」という呼び方をすることもありますが、いずれにせよどのような学習方法なのかよく知らないという人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、アンプラグドプログラミングの詳細と学習方法について解説。
小学校低学年からできる無料教材やゲームも紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
アンプラグドプログラミングとは?
アンプラグド(Unplugged)とは、電源プラグを繋がないという意味。
つまりアンプラグドプログラミングは、パソコンなどの端末を使用せずに「プログラミング的思考」を学ぶ方法のことです。
アンプラグドプログラミングは、手軽に楽しみながら学べるのが特徴。
絵本やゲームなどさまざまな教材が販売されているほか、トランプやプリントで学習する方法もありますよ。
アンプラグドプログラミングで身につく「プログラミング的思考」とは?
文部科学省では「プログラミング的思考能力」について、以下のように定義しています。
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
引用元:文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」
もっと簡単にいえば、「プログラミング的思考能力」は目的を達成するために何をどのような順番でおこなうか論理的に考える力のことです。
具体的には、次の5つの能力を指します。
- 分解:物事を一旦分解して正しく把握する能力
- 組み合わせ:問題解決の手順を考え、分解した動きを適切に組み合わせる能力
- 評価:頭の中で手順をたどり、最適な方法かどうか分析・評価する能力
- 一般化:物事の類似性・関係性を見出し、他の場所・他の人でも使えるようにする能力
- 抽象化:重要な情報に焦点をあて、物事を単純化して応用する能力
これらは、どんな職業に就いても役立つ普遍的な能力といえます。
小学校におけるプログラミング教育も、この「プログラミング的思考」を身につけることが最大の目的です。
アンプラグドプログラミングのメリット・デメリット
アンプラグドプログラミングは、小学校のプログラミング教育に取り入れられているのはもちろんですが、自宅学習としておこなう保護者も少なくありません。
具体的にどのようなメリットがあって、この学習方法が注目されているのでしょうか。
デメリットもあわせて紹介するので、学習を始める前にチェックしておきましょう。
アンプラグドプログラミングのメリットとは
アンプラグドプログラミングは「手軽さ」と「とっつきやすさ」が最大の魅力。
なぜ手軽・とっつきやすいとされているのか、それは以下の2つが主な理由です。
①端末を用意する必要がない
アンプラグドプログラミングは端末が必要ないため、無料または少ない予算で手軽に始められます。
自宅学習で「端末を買ったは良いけど子どもが全く興味を示さない」なんてことになったらショックですよね。
その点、アンプラグドなら負担なくプログラミング学習にチャレンジできますよ。
端末を使ったプログラミング学習の前段階として、基本的な考え方を身につけるために取り入れると効果的です。
②友達や親と一緒に遊び感覚で学べる
アンプラグドプログラミングは、ゲーム感覚で遊びながらコンピュータの仕組みを感覚的に理解するのが目的です。
好きなものほど頭に入りやすいのは大人も子供も同じ。
アンプラグドでの学習が楽しいと思えれば、端末を使った学習にもスムーズに移行できます。
アンプラグドプログラミングのデメリットとは
アンプラグドプログラミングは、プログラミングそのものを学べるわけではありません。
あくまでも端末を使ったプログラミング学習にスムーズに取り組むための、準備運動のような位置づけと考えてください。
プログラミング学習の雰囲気を掴みたいだけなら、ひとまずアンプラグドのみでも良いでしょう。
しかし本格的にプログラミングの考え方を学ばせたい、パソコンの操作スキルを身につけさせたいと考えているなら、いずれ端末を使用した学習に移行する必要があります。
アンプラグドプログラミングの実践例
まずは家にあるものでお金をかけずに軽く実践してみたいという人もいるでしょう。
そこで簡単にできる、アンプラグドプログラミングの実践例をご紹介します。
小学校低学年向けの教材も用意したので、ダウンロードしてぜひ挑戦してみてくださいね。
①犬をうごかそう(未就学児~小学校低学年向け)
未就学児~小学校低学年では、まずは以下のようなプリントから始めるのがおすすめです。
※教材は下のボタンからダウンロード・印刷してください。
この学習では、指示(アルゴリズム)により目的地に一番早く到着する方法を考えます。
なお、学習教材は手書きでも簡単に作成可能です。
障害物を作ったり途中に回収するアイテムを設定したりすると、難易度を調整できますよ。
②ロボット人間(小学校低学年~高学年向け)
子どもに言われたとおりに保護者が動くようなアクティビティも、コンピュータの動きを理解するのに役立ちます。
コンピュータは指示された順序で指示されたとおりに動きます。
そのため、保護者は指示された動き以外のことをしてはいけません。
例えば子どもが「右を向く」「ぞうきんを手に取る」などの指示を出し、保護者が掃除する動きを考えてみましょう。
なお、テーマは「チョコを食べる」「ダンスする」など何でも構いません。
プログラミングで実際に使用する「繰り返し」や「条件分岐」などの指示を追加すると、小学校高学年でも楽しめます。
③トランプマジック(小学校高学年向け)
小学校高学年は、テレビや動画を参考にプログラミング的思考を学ぶのもおすすめです。
例えばEテレで放送された「テキシコー 第9回放送」のトランプを使ったマジック。
選んだカード「3」に対し、マジシャンはトランプの山3つの一番うえにそれぞれ3を出現させています。
これは一体どのようなトリックなのでしょうか。
手順をたどり、楽しみながらトリックを考えてみましょう。
小学校低学年におすすめのアンプラグド教材・ゲーム
ここからは小学校低学年~高学年におすすめのアンプラグド教材・ゲームを紹介します。
対象年齢も記載しているので、商品選びの参考にしてください。
【書籍】ルビィの冒険(Hello Ruby)
ルビィのぼうけんは、世界20ヶ国以上で親しまれている定番のプログラミング絵本です。
前半は好奇心旺盛な女の子「ルビィ」が宝石探しに出掛けるストーリー。
ルビィが問題に出会い、解決していくなかで、プログラミングに必要な考え方に触れられます。
後半は絵本パートと連動した練習問題になっており、遊びながら楽しくプログラミング的思考を学べますよ。
シリーズは「プログラミング」「コンピュータ」「インターネット」「AIロボット」の全4巻です。
■対象年齢5歳~
【書籍】テラと7人の賢者
テラと7人の賢者は、カード・パズル・手品などの「ナゾ」に挑戦しているうちに、自然とコンピュータの知識やプログラミング的思考が身につく絵本。
書き込み式や付属のカードを使った謎解きで、手を動かして学べるのがポイントです。
別冊「冒険の書」に謎解きの詳しい解説や学びのねらいが掲載されているので、プログラミングの知識がない保護者も安心して一緒に読めますよ。
■対象年齢6歳~
【書籍】ローリーとふしぎな国の物語
ローリーとふしぎな国の物語は、主人公ローリーが、不思議なファンタジーの世界で「プログラミング」や「アルゴリズム」に触れながら冒険する物語。
文章が中心なので小学校低学年よりは小学校高学年~の子どもにおすすめです。
ストーリー仕立てになっており、大人も頭を使う問題に沢山出会えますよ。
プログラミング学習の知識が全くなくて不安という保護者にもおすすめしたい本です。
■対象年齢10歳~
【ボードゲーム】Robot Turtles(ロボット・タートルズ)
ロボット・タートルズは子どもがプログラマー役、保護者がコンピュータ役になり、カメが宝石までたどり着く道のりをカードでプログラミングする非競争ゲーム。
家族団らんのツールとして楽しみながらプログラミングの基本的な考え方を学べます。
この記事で紹介している無料教材「犬をうごかそう」を、もう少し難しくしたものと考えるとわかりやすいでしょう。
未就学児~小学校低学年におすすめです。
■対象年齢4歳~
【ボードゲーム】CODE MASTER(コード・マスター)
コード・マスターは、NASAのVRプログラマーが考案したボードゲーム。
遊びながらコーディングの考え方を習得できます。
10のマップ(場面設定)を使い合計60のレベルにチャレンジできるため、徐々にステップアップして条件分岐やループなどの考え方を無理なく学習可能。
ロボット・タートルズと同じThinkFunの商品ですが、こちらの方が難易度は高めです。
マインクラフトを思わせるデザインも、子どもの興味を引きますよ。
■対象年齢8歳~
【おもちゃ】カードでピピッとはじめてのプログラミングカー
カードでピピッとはじめてのプログラミングカーは、指示を出して車をスタートからゴールまで進ませるおもちゃ。
クラクションやヘッドライトといった細かいカーアクションも設定可能です。
関数(マクロ)が使えたり、走らせ方がICチップの読み取りだったりと高性能。
価格も良心的で、プログラミング学習に興味を持つきっかけ作りにぴったりですよ。
■対象年齢3歳~
【おもちゃ】ロジカルルートパズル
ロジカルルートパズルは、5色のボールが同じ色のゴールに入るようにピースを置き換えてルートを作る知育玩具です。
問題集が付属しており、60種類の問題を解きながら徐々にステップアップしてプログラミングに必要な思考を習得可能。
パズルの楽しさとボール転がしの面白さがあり、夢中になって繰り返し遊ぶうちに問題解決能力や集中力も身につきますよ。
あまり場所を取らず、手元で手軽に遊べるのも嬉しいですね。
■対象年齢4歳~
まとめ:アンプラグドプログラミングに挑戦してみよう!
アンプラグドプログラミングは、プログラミング教育の前段階として基本的な考え方を身につけるのにぴったりです。
アンプラグドだけでプログラミング教育が完了するわけではありませんが、楽しみながらプログラミング的思考を身につけられますよ。
アクティビティ・絵本・ボードゲーム・おもちゃなど、学習方法の幅広さもアンプラグドの魅力。
お子さんに合った教材を、さりげなく遊びに取り入れてみてはいかがでしょうか。